転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


171 レーア姉ちゃんのパーティーとちょっとだけ強そうな魔物の反応



 そして二日後。

 朝のお手伝いをした後、僕はレーア姉ちゃんのお友達と一緒にグランリル近くの森へ来たんだ。

「わぁ、森だぁ!

「森だぁって、ルディーンはこの前もお父さんたちと来たんでしょ?」

「そりゃあ来たよ。でもさぁ、あの日は森に来たって言ってもブラックボアとかブラウンボアが探知魔法に引っかかると僕が一緒だと危ないからって近所のおばさんたちと一緒に森の外に出されてお留守番させられてたもん。狩りをしに森に来るのとは全然違うよ!」

 確かにレーア姉ちゃんの言う通り、この前僕は村の大人の人たちと一緒に冷凍庫や冷蔵庫に使う魔石を取る為にこの森まで来たんだよね。

 でも、魔物を狩るのはお父さんたちや村の大人の人たちだけで、僕は参加させてくれなかったんだよ。

 も〜、僕だってブラックボアくらいならマジックミサイルでやっつけられるのに!

 それに今の僕のレベルなら、ブラウンボアにだってある程度魔法が通じると思うんだよね。

 それなのに危ないから来ちゃダメって。

 じゃあ入り口近くで鳥とかウサギを獲ってるよって言ったんだけど、そしたら僕が居ないと猪の魔物がどこに居るか解んないから、入り口から動いちゃダメだって言うんだよ。酷いよね。

 おかげであの日は奥に入って探知魔法を使っては森の外へ。で、誰かが帰ってきたらまた森の中へ入って探知魔法ってのを繰り返すだけで、ちっとも楽しくなかったんだ。

 だから狩りができる今日は、とっても楽しみなんだ。

「そっか。でもルディーン、獲物を見つけたからって勝手に魔法で狩っちゃダメよ」

「え〜、なんで?」

「だって今日はうちのメンバーが鳥をいっぱい狩りたいって言ったからルディーンを連れてきたんだもん。なのに魔法で狩っちゃったら、私たちはただの魔物運びになっちゃうでしょ」

 あっ、そっか。そう言えば僕が探知魔法で見つけたのをすぐに魔法で狩ったら、みんな何にもできないもんね。

 それにお兄ちゃんたちと一緒に狩った時も楽しかったもん! やっぱり一人で狩るより、みんなで狩った方が楽しいと思うんだ。

「うん、解った! じゃあ、見つけたら言うね」

「お願いよ。いくら楽しいからって、すぐに狩らないでね」

「も〜、大丈夫だって言ってるでしょ! ちゃんとみんなで狩るから大丈夫!」

 ちゃんと約束したのに、レーア姉ちゃんたら酷いなぁ。

 くすくす。

 そんな僕とレーア姉ちゃんを見て、近くにいたレーア姉ちゃんのお友達が笑ってた。

「レーア、そんなに念を押さなくても大丈夫よ。楽しくなっちゃってすぐに魔法を使っても、その時にもう一度言えば次は私たちに任せてくれるでしょ」

「そうだけど……」

 レーア姉ちゃんにこう言ったのはマリアさん。近所に住んでるお姉ちゃんと同い年の女の人だ。


 レーア姉ちゃんのパーティーって全員が同い年の女の子なんだよね。

 うちの村はどの家も子供がいっぱいいるけど、それでも比較的小さな村だから同い年の子はそんなにいないんだ。

 だからパーティーを組む時は歳の近い子が集まって作るんだけど、それでも人が足らないから普通は男女混合のパーティーになっちゃんだ。

 なのにレーア姉ちゃんは同い年の女の子が4人もいたもんだから、ちっちゃな頃から大きくなったらみんなで一緒にパーティーを組もうねって話してたんだって。


「そうそう。それにルディーン君がいっぱい狩ってくれたら、普段はあんまり食べられない鳥がいっぱい獲れるのよ。私としては、むしろルディーン君に頑張って欲しいくらいだわ」

「呆れた。ミラ、あんた、こんな小さな子1人に狩りをさせようって言うの?」

「いや、そんな事は言わないわよ。ただ、私が弓を射るよりルディーン君が狩った方がいっぱい狩れるかなって思っただけよ」

 こんな話をしてるのはエイラさんとミラさんの二人。

 これにレーア姉ちゃんとマリアさんを含めた4人がお姉ちゃんのパーティーなんだ。


 このパーティーのリーダーはマリアさん。濃い茶色のショートカットで背の高い、どっちかって言うと男の子っぽい女の子で、それに対してエイラさんは肩甲骨くらいまで伸ばした濃い金髪でちょっとくせっ毛な少し垂れ目の優しそうなお姉さん。

 で、最後のミラさんは一番小柄で悪戯っぽい顔をした、プラチナブロンドの長いさらさらストレートヘアーの女の子だ。

 この4人だとなんとなくマリアさんが剣と楯を持った前衛になりそうだけど、レーア姉ちゃんのパーティーは是認が弓を使った狩りのスタイルらしい。

 だから普段は大物は狙わずに、小さな鳥や一角ウサギみたいな弱い魔物を中心に狩ってるんだってさ。

「はいはい。無駄口はそこまで。それじゃあみんな、森に入る前に装備の点検をするわよ」

 レーア姉ちゃんたちのパーティーには前衛がいないから、森に入る前には普通のパーティーよりもしっかりと装備の点検をするんだって。

 お姉ちゃんが言うには、弓矢ってちょっとでもひびが入ってると矢を射る時にすぐ折れちゃうし、そうじゃなくても弦が緩んでたり狩りの途中で切れたりしたらとたんにピンチになっちゃうんだよね。

 そりゃあお姉ちゃんたちだって僕みたいにショートソードは持ってるよ。でも楯を誰も持ってないから、それを使うのは最後の手段。

 普通は遠くから獲物を狙って安全に狩りをするのが基本だから、装備の点検だけは常にしっかりしてるんだってさ。


 そんな訳で、お姉ちゃんたちに混じって僕も装備の点検。

 とは言っても、僕の場合はショートソードは腰に帯びてるけど、お兄ちゃんたちとの狩り以来一度も使って無い上に毎晩お兄ちゃんたちと一緒に手入れをしてるからおかしくなってるはずが無い。

 それに鎧っぽいものは前にお父さんに貰ったブラウンボアのチュニックと足に撒いてる皮ひもの防具だけだから、すぐに終わっちゃった。

 だからしっかりと点検してるお姉ちゃんたちと違って暇になっちゃったもんだから、なんとなく森の中を探知魔法で探ってみたんだけど……。

「何か今日、おっきな反応がいっぱいあるなぁ」

 帰って来た魔力の波の感じからすると猪とかの攻撃的な魔物じゃないみたいだから問題は無いんだけど、この魔物はお姉ちゃんたちの弓で狩るにはちょっと強すぎると思うんだ。

「お兄ちゃんたちと狩りに来てたら狩ったんだけどなぁ」

 実際に見てみないとはっきりとは言えないけど、反応から見た感じからすると多分僕のマジックミサイルなら狩れると思う。

 ただ空を飛んでたり木の上に居たりする気配が無いから、もしかすると普通の鳥の魔物より強いかも。

 それに殆どが2匹以上纏まっているみたいなんだよね。

 まぁ今の僕ならマジックミサイルを一度に2発撃てるし、反応からして強さはブラックボアくらいの魔物だからきちんと狩る獲物を探知魔法で選べば防御に特化した魔物でも無い限り狩れない事は無いと思うんだ。

 でもさ、もし一発で倒せなかった時のことを考えると、やっぱり楯役が欲しいんだよね。

「やっぱり今日はやめとこ」

 レーア姉ちゃんたちは魔物を安全にいっぱい狩るつもりで今日は来てるんだから無理をする事、無いよね。

 見た感じ、大きな反応のほかにもビックピジョンみたいな他の弱い鳥の魔物も結構いるみたいだし、ヒルフェザントなんかは普段は地面を歩いてるからレーア姉ちゃんのパーティーでは滅多に狩れないって、昨日の晩御飯の時に言ってたもん。

 多分そんなのをいっぱい狩った方がお姉ちゃんたちも嬉しいと思うんだ。

「でも、次お兄ちゃんたちと一緒に来た時に狩りたいし、一度くらいは見ておきたいなぁ」

 狩りの途中に近くに居たらレーア姉ちゃんに頼んで見るだけ見に行ってみよ。

 もしかしたらとっても美味しい魔物かもしれないし、僕が知らないだけでレーア姉ちゃんやパーティーのみんなが知ってる魔物かもしれないもんね。


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